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とっても微妙にやります。(意味不
鋼の錬金術師焔で5題(1)二回目。
前回はこちらから→拳銃

でわ、追記からハイどーん!(は?

大丈夫、カップリングかんけーなしです。

012.ビドー


随分と前から綺麗なものが嫌いだった。お手本どおりに動く現代も貼付けたような笑顔を浮かべる教師(偽善者)も、ただただ自分の醜さをあらわになっていく気がするだけだったのだ。平穏で有り触れた生活ほど苦痛なものなどなかった。何もかも籠の中で動き回るような束縛感を与えられたまま何をどうすればいいというのだろうか。ああならばいっそ一思いにこの身を切り裂いてくれたってかまわなかった。

この関係に愛情などというものがあっただろうか、もうとうの昔に忘れてしまった。けれどそれさえもどうでもよかったのだ。きっとお互い求めてきたものがコレだったのだから。

その冷ややかな瞳がいつだって自分の理性をつついてきた。いたぶってくれていい、蔑んだって、何もかも壊してしまえばいいから苛立たしい朝日が昇るまで一緒にいようじゃないか。本能に身を任せてどうしようもない快感に身を震わせて壊れてしまえ、お前も俺も望んでいたことだった。

理解なんてしてもらおうがしてもらわなかろうが知ったことかと唾を吐く。同時に空っぽの胃の中から何か出てきそうな気もして心配したけれど。お前の合言葉に俺が頷けばいいだけだった。

“安定”なんか望んじゃいなかった。
不自然にもアンバランスな自分たちのこの衝動がいつまでも続けばいいと思ったのだ。


「なあ、そうだろう...?」










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
続きません(汗
リビドーってのは欲望とか性的衝動の元になるエネルギーとかって意味があります。
ああ、表現できてねぇ。

この度、シュウ様の「Aegis」というサイトから
鋼の錬金術師「焔で5題」の(1)というお題をお借りしました。
これ見た瞬間一目惚れをしてしまいましたよ。

えと、シュウ様のサイトはコチラから→Aegis

それでは追記から始まります。

カップリングなんてねーYO
リクあればやるかもだけど(え

小学生の弟が近所で捕まえてきた幼虫を今でも大事に飼っている。蝶々にするのだと息をまいて、多くの動物達が眠るこの冬に、やがて蝶々になるであろうサナギもその身を固く閉じきって、あたたかい春が来るのを夢見ているのだろうか。






028 ゲハ蝶






冬は嫌いだ。寒いし手は霜焼けになるし雪は降って積もれば積もるほど道は狭まり歩きにくくなる。それだけじゃない。弟が休みの日になると「遊ぼう遊ぼう」と駄々をこねるのだ。そして結局は母に「つきあってあげなさい」と押されて負けてしまう。正直、鬱陶しいと思っていた。最近じゃあ、毎日のように弟の虫かごの中のサナギを見つめ、羨ましいと思ってしまうほどだ。
「あたしもお前みたいに春が来るのをじっと待っていたいな」
どうしようもないことを口にして、気を紛らわせていた。

けれど、その必要もなくなった。

世界は同じようでいつも変化している。そう、自分も変わったのだ。世界にあわせて、しかも劇的に変化することが出来た。春が来る前に蝶々になった気分だった。
「東城さん!」
去年までは有り得なかった。冬に息を荒げながら走るなんてこと。東城と呼ばれた背の高い男性がこちらを振り向いた。初めてあった時と変わらないやわらかな笑顔を見せてくれた。
「千春ちゃん、こんにちは」
「こんにちは。すみません、遅くなっちゃって」
「いいよ、気にしないで」
そう言って遅刻を許す彼の鼻と頬は赤かった。きっと長いこと待っていたのだろう。そんな彼のささいな気遣いに少し、いや大いに胸を躍らせる自分は幸せ者だろう。

笑顔を見るだけで、名前を呼ばれて、こんなにも喜べるのはきっと
「行こうか」
「はい」
あなたが好きだから、なんだ。

東城透。彼のフルネームだ。父が勤めている会社の今年入った新入社員なんだそうだ。しかもエリートクラスか何かで、20歳で入社したのだからすごいらしい。いつ追い抜かされるかわからないと父は笑って言う。彼も遠慮がちにそんなことはないと微笑んでいた。扉の影からその様子を見ていたら、いわゆる人目惚れに近い惚れ方をしたのだ。それから勉強やら何やらと理由をつけて一緒に出かけている。馬鹿なんじゃないか、と思われてもいいくらいに。けれど彼は嫌な顔ひとつせずに付き合ってくれる。そんな優しさにいつでも惹かれていた。

「ただいまぁ」
「おかえり、千春また東城さんとデート?」
いたずらに母は尋ねてくる。前はウザくて仕様がなかったけれど、いまでは「違うよ、勉強教えてもらってたの」と平気な顔で言葉をかえす。
「ありがたいわ、東城さんのおかげで千春も成績があがるし」
頬に手をあててやわらかく微笑む母はどことなく彼に似ているな、なんて連想してみたりして、フルフルと頭を振る。彼は彼の魅力がある。それを母と同じにするのはなんだか抵抗があった。
「でももうそれも終わるかもしれないぞ」
「え?どういう事、父さん」
珍しく帰りが早かった父が発した言葉に反応するが早く、あたしは父に問いかけた。父は自分が読んでいた駅で買ったであろう夕刊をたたんで机に置いた。
「うん、それがなぁ、東城が優秀だっていう噂を本社のほうが耳にしたんだろう。今度、そっちのほうに移る事になるかもしれないんだ」
あくまで可能性だけどな。という父なりの気遣いの言葉はあたしには届かなかった。

あの人が...いなくなる?

それが真実かはたまたはったりなのか、つきとめるべくあたしは彼を呼び出した。


「千春ちゃん、遅れてごめんな」
この前とは反対に、あたしは待ち合わせよりもずっと早くに来て待っていた。
「ううん、こっちこそいきなり呼んじゃってすみません」
「今日はどうしたの?話あるって言ってたけど...」
「はい、すぐに終わりますから」
ギュッとコートを掴んだ。今年買ったばかりのコートはいつでも目の前の彼に会う為に母にお小遣いを前借りして買った物だった。

「あの...本社に異動するって....本当、ですか?」

少しだけ、本当に少しだけ、彼の目がおおきくなった。ああ、驚いている。あたしはどうか嘘であってと、心中で呟き続けた。
「ああ...その話」
以前とは別の意味で高鳴る鼓動よ、どうか止まって。
「もしかして、部長から聞いた?」
どうかただの噂であって。
「まいったな...」
お願いお願いお願い...お願いだから、

「千春ちゃんには言わないでおくつもりだったのに」

まだ物語の終わりを知りたくはないんだ。


どう別れの言葉を告げたらいいのかわからなかったから、言わないでおくつもりだった。そう彼は言っていた。それは以前同様、彼なりの優しさなのだけど、何故だろう。その時だけはその優しさが恨めしく思えた。
あたしは動揺していたのか、ちゃんとした挨拶もできずにその場から走り去ってしまった。

我にかえったときにはもうすでに自宅の前に到着していた。そーっと玄関のドアを開けて中へと入る。父は帰っていないらしい。母は買い物、弟は友達と遊びにいっているのだろう。家の中は妙にシーンとしていた。
「ただいま...」
自分の声とは思えないくらいに、ソレは低く虚しく家に響いた。コートを脱ごうとして、ふと「もうこれは要らないな」と気がついた。誰もいないとわかっていたけれど、そろそろと音もなく歩いて弟の部屋に忍び込んだ。
背の低い本棚の上。お決まりの位置にあるサナギの虫かごの前に椅子を持っていって座る。これも同じ、いつもの行動。同じことを、今まで何度もしてきた。毎日のように彼に会いに行って、傍にいるだけで幸せを感じていた。ただ、自分の為だけに。彼の事を考えた事があっただろうか。
(多分...ない)
よくよく考えてみれば、本社に異動することは彼にとってプラスになる。ならば、自分はそれをあたたかく見守るべきなのではないか。自分を犠牲にしてまでも。
「馬鹿だ、あたし」

世界はいつでも変化し続けるなんて洒落た事を一度でも思ってしまった。あたしは何も変わらないままでひとり置いてけぼりを喰らわされたような感覚がする。

「どうしようもないなぁ」

どうして、傍にいるだけで幸せだったのに、それだけで充分だったのに、

愛されたいと、願ってしまった?


見返りがほしかったわけじゃないはずだ。けど、人間ってものは欲張りだから、時間が経つにつれてもっと先を見てみたいと、知りたいと、ほしいと、思ってしまったんだ。
―――手に入りやしないのに?
「っ!!」
気がついたら自分は目の前の虫かごを手でたたき落としていた。ガラン、と無機質な音とともにサナギが床に転がった。けれど、固いソレは破れる事はなく、サナギの眠りを妨げることはなかった。

ねえ、サナギよ。
ただ春を待つだけなのは辛くはないか?
ちゃんと春が来るのか、不安にはならないか?

「あたしは怖くてたまらなかったんだ」


愛されたいと願うあまりに、
彼を傷つけることなんてできないと、
自分はまだ固くて冷たいサナギなんだと、
今さらになって、気付かされた。







終わり








なかなか長い?
アゲハ蝶はウチの頭の中のイメージだけで書いてみました。

お題更新しました。が、内容がアレなので追記で。

お題「空蝉」です。どぞー↓↓

テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学


人の命とはまるで泡沫のように、いつか突然パチンとはじけて消えてしまう。
それは哀しく、苦しく、時には愛しさを感じる。

はじけた命はどこへ逝くのだろうか。
きっと天国へいっているだろう、と神を信じていない自分でさえそう考える。
それほどに、まわりに多大な影響をあたえるのだ。
いい意味でも、悪い意味でも。

幼い子供が親を失う。
とめどなく涙は流れ、きっとこう泣き叫ぶのだ。
「なんでぼくをおいていくの」
玩具をねだるのとは違う涙で、
声が枯れてしまうんじゃないかと思うくらいの大きさで、
泣いて泣いて...そして
(嗚呼だけれど)
もうそんな歳ではないのだと、ぐっと歯をくいしばる。

願いが叶うとしたら、どうかもう一度、
もう一度会えたなら。
会えたなら?

それを言ったら、きっと君はバカらしいと笑うだろうな。







021.ッサン♯2春光







サァ、とやわらかな風が髪を乱れさせる。それを直すこともせず、目の前の墓石の前に片手では抱えきれないほどの花束をそっと置いた。
赤いアザレア。
彼女の好きな花だった。
『知ってる?この花の花言葉――』
脳裏に浮かぶ彼女の顔と声。男の自分に、花のことなど詳しいわけがなく、そっけなく『何だ?』と聞き返したのを覚えている。今となっては、あのときにもっとちゃんと聞いていれば良かったと後悔している。

『愛されることを知った喜び。ね、素敵でしょ?』

ああ、うんそうだなぁ。
あのときはどうでもいいと思っていたのだけど、本当に馬鹿だなぁ。俺って。
ちゃんと話してれば、こんなにも後ろめたいものなんて残らないのに。
いや、それだけじゃない。もっと、もっと、君といれば良かったなぁ。
今更なんだけど。

人は死んだらもう生き返らない。
当たり前だ。こんなことは今時子供だって知っている。そういえば昔、ゲームみたいに人間にもどこかにリセットボタンがあって、それを押せば何度だって生き返るんじゃないかって考えていた時期があった。
「昔から、俺は馬鹿だからな」
大好きだった祖母が死んだとき、自分は顔にかぶせた白い布をはぎとってリセットボタンを必死に探していた。
もうその頃にはそんなものないってことは知っていた。
だけどきっと、いや確実に、認めたくないと探していたのだろう。

子供なりの死に対する最後の否定行為なのだ。

「笑うだろ、きっと」
今だって、あったらいいと思っているのだから。

俺とは違って、頭の良かった彼女は自分を蝕んでいく病気のことを最後まで俺に黙っていた。何と言う名前だったか、もう忘れてしまった。大事な彼女のことなのに。
最後の言葉だけはちゃんと覚えているけど。

『ねえ、今日いい天気?』
『そう...よかった。あ、見て、鳥』
『あたし、“あたし”に生まれてきて良かった』
『最後までそばにいて、手握ってくれる人がいるんだもん』

かすれた「ありがとう」を最後に、彼女は目を閉じた。彼女の母は何度も何度も彼女の名を呼んでいたけれど、俺はぎゅっと手を握ったままだった。
弱り果てて、骨と皮だけの手だった。
そんな風になるまで、気がつかなかったのだ。彼女の異変に。
とたんに目尻が熱くなった。ボロボロと涙は溢れ、より一層手を強く握った。

悔しかった。
何もしてやれない自分に苛々して、哀しくて、また泣いた。



ピィーヒョロロロ、と奇妙な声で鳶が鳴いた。
彼女が亡くなって、こんなにも自分の世界は変わったのに、世界は知らんふりで過ぎていくのだと、今自覚した。
物語で言えば、主人公でもない脇役が滑って転けたような些細なことなのだ。たとえその脇役が骨折したとしても、物語は紡がれていく。そんなもの。

俺にとっては哀しいけれど、世界にとってはどうでもいい日常。
俺もいつかはその日常に巻き込まれて逝くのだ。

「だからさ、そのときまで待っててよ」
生前に話せなかったこと、話したかったこと、言葉じゃ伝えきれないもっとずっと伝えたいこととか、土産として抱えて逝くから。
絶望なんかしない。君の笑顔は俺にとっての最後の希望だ。
絶望なんか、しない。






もう一度会えたなら。
その温かい胸の中、沢山泣いて力いっぱい抱きしめたい。

(な、バカらしいくらい切実なんだよ)









終わり









久しぶりのお題更新。
この曲はうん、ホント大好きですね。
じぃ〜んと胸に染み渡るんです。
これは晴一さんのお父様がお亡くなりになられたときの歌でして、
大切な人を失うことの哀しさ、
また会いたい、会おうっていう願いも込められていて、すごく好きです。
「もう会えないのかなあ?そう思うのは寂しすぎるから」
歌詞の一部です。
寂しすぎるから、また会おうと思うってことなんでしょうか。奥がふかいです。

テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学


「なあ」
「なぁに」
「おれがお前のことを好きって言ったらどうする?」
君は少しだけ、目を見開いた。
「そうね、この関係はオシマイかな」
微笑む君がうらめしい。
「じゃあ言わないでおこう」
冗談めいた顔をして、もう一回寝ると言って、目を枕に押しつけた。








037. ビターイート








目を開けると、隣ではまだ彼女が寝息をたてていた。少しダルい体を持ち上げ、彼女が起きないようにベッドから出る。せめてもの気遣い。褒めちゃあくれないけど。
壁にかかってる時計を見ると、7時30分。確か今日は非番だったはずだと、頭の中で確認しながらシャツに袖をとおした。途中、ケイタイを落としてしまって彼女が起きるかと思ったけど、彼女は小さく寝返りをうつだけだった。
(朝ご飯、何にしよう)
パンはあったかな。あるはずだ。彼女がくることははじめからわかっていたから。おかずはどうしよう。簡単にスクランブルエッグにしようか、サラダもつけなきゃいけない。何せ彼女は食事にだけはうるさいから。


もうすっかり太陽が見えだした頃、やっと彼女は起きてきた。
「あれ、もう起きてたんだ」
「ああ、おはよう。ご飯つくっておいたぞ」
「ん」
ふぁ、と大きなあくびをしながらテーブルについた。
そして彼女は目の前の料理を見てひと言。
「男にしては上出来よね」
「それはどうも」
「アンタは?」
「食べたよ。君があまりにも遅いから」
「あっそ」
イライラ感たっぷりの言葉をもらった。
怒った顔も可愛くていいね。なんて言えない。
言ったら多分殺される。



「アンタ今日非番なの?」
「ん、そうだけど。何?」
「べっつに。暇ねぇ」
「それは君も同じじゃないかい?」
「夜は忙しいわよ」
バカな男の相手しなきゃいけないんだもの。
手元のフォークをくるくると回しながら彼女は眉間にしわを寄せて言った。
「おれみたいなのの相手しなきゃいけないもんなぁ」
「アンタはまだマシよ」
「おや、そうかい?」
「そうよ。中には結婚しろってやつもいるんだから」
鬱陶しくてやんなっちゃう。
ふてくされたように頬をふくらませながら彼女は言う。その表情は昨晩とは似つかない子供っぽい顔で、これもいいななんて考えたりしている。
彼女いわく、男にはいさぎよさが必要らしい。いつまでもネチネチとくっついてくる男はサイテーだと、男女関係には百戦錬磨と称される彼女は言う。
おれだってそんな男のひとりなんだけれど。


彼女への想いに気付きはじめたのはいつの頃だったか。
もう覚えていないほど昔のことだ。
だけど同時に無理なことだと確信したのも同じ頃だ。だって彼女は純粋な男女関係なんてものが大嫌いだから。世帯を持つことも、自分を束縛するだけだと吐いていた。
そんな彼女に、どうやって想いを告げるというんだ。

キスも、行為も、彼女にとってはどうでもいい経過にしかすぎなくて。
この感情も本当ははやく捨てなければいけないんだろうけど。
もしかしたらいつかは...なんてくだらないことを考えている。

(そんなこと、あるはずがないのに、ねぇ)

好きなんて、口が裂けても言わないから。
(言えないから)
好きなんかなってくれなくていいから。
(君の邪魔はしたくないから)
せめてもう少し、君のそばにいさせてくれよ。


目を閉じて、彼女にきこえないほどの溜息をついた。






終わり







叶わない恋。っていう話好きです。
それでも好きだ!みたいなのが。

テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学


何故、争うのか。
そう、命令されたからだ。






065 Twillit,ワイライト







問われたことに「命令だから」と理由づけることで自分を納得させていた。
だから、殺すことも「命令だから」と呟きながら、殺した。
たくさん殺した。
男も、女も、子供も、老人も、動物も、みんなみんな赤く染まった。

「なあ」
「なんだ」
「また殺すのか?」
「何を今更」
「まだ殺すのか?」
「それが俺たちの仕事だ」

冷酷ながらも、軍人らしい答えを返す仲間の目は、死んでいた。
多分おれも、死んでいる。

足下の、腕を見下ろした。
これは、おれじゃない、誰かが殺した腕だ。
ここはそんなものでいっぱいだ。
足下には腕。隣には足が、周りにたくさん散らばっている。

「知ってるか?」

仲間がおれに聞いた。

「何をだ?」
「明日、ここら一帯を焼き払うそうだ」
「なんで」
「どうせ、死体の処理が面倒なんだろう」

つまりは、ゴミを焼却炉に入れようとする行為。

「人なのに」
「でももう死んでいる」
「だから焼くのか」
「だろうな」
「誰にも泣いてくれないまま、消えるのか」

仲間は黙った。
黙って少し湿っている煙草に火をつけた。

「俺たち下っ端にゃ、どうすることもできないさ」







翌日、テントから出てみれば、あたりはもう炎に包まれていた。
まだ殺されていない人たちは、慌てて逃げている途中で、軍人に見つかり、殺された。そして、火の海に投げ込まれた。

(ああ、これは)
熱風が、少し離れたここにまで届いた。
(大規模な、火葬だなぁ)

知らない人に、自分の殺した人に、十字をきった。






全てが終わったとき、あたりは焼け野原と化していた。
まだ熱気が残っている大地に足を踏み込む度、木や、人だったものがパキンと折れる音がして、焦げ臭い匂いが鼻をかすめた。
他の軍人は、全てが終わったことに安心して、すでに帰り支度をしている。
おれは一人でこの場所に残った。
数日前まで人々が笑い、泣き、暮らしていたこの場所で、おれは呟いた。


「世界最後の一人になるというのは、こんなものだろうか」









終わり









微妙に「さあ最期を見届けましょう(戦争の話)」に続いてます。
勝手に繋げただけです。

テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学


拝啓
俺の最初で最後、最高の親友へ。







102 らいろ







こんなふうに、手紙をだすのは初めてだな。
「なんで突然」とか言うかもしれないけど、これは思いつきと気分ってことにしておいてくれよな。最近は全然顔あわせてないしさ。たまにはこんなのもいいよな?
でも、手紙っていっても何を書けばいいのかよくわかんないな。
とりあえず、元気か?というか元気だよな?
もし「入院した〜」とかいうんだったら、一回その顔殴りに行ってやる。
「なにくたばってんだよ」ってな。
ああ、俺はもちろん元気だ。毎日上司の嫌味聞きながら頑張ってるよ。

そうだ。このまえ従兄弟の結婚式行ったんだよ。
覚えてるか?小学生のとき一回だけお前と俺とその従兄弟とで遊びに行った時あっただろ?あのときは道に迷って大変だったよなぁ。みんな大泣きして、お巡りさんがすぐに道教えてくれたけど。
ああ、それでな、その従兄弟が俺に「早く君のお嫁さんも見せてよね」って。
それで俺言ってやったよ。
「ああ、お前の奥さんよりずーっと綺麗な人見せてやるよ」って。
今はちょっと言い過ぎたかも。って思うけど、まあいいか。
それで、お前の方はどうなんだ?彼女いるのか?
いない訳がないか。お前は学生時代からモテモテだったもんな。
羨ましいかぎりだよ。
(ちなみに俺のことは聞かないでくれ)

おかしいな。本当はもっともっと書きたいことがあったはずなのに、いざ書くとなると頭の中が真っ白になるな。
何があったっけ...あ、そうだ。
最近俺の同期が会社辞めたんだ。(リストラじゃないからな)なんでも「自分は夢を追い続けるんだ!!」と言っていた。その夢っていうのが確か「小説家」だったかな。
今までずーっと真面目に仕事してきたヤツがだぞ?
俺にとってはものすごく驚くことだった。

でも、追う夢があるっていうのはいいことだよな。
俺も昔は「プロ野球選手になってやる!!」って息巻いてた時期があったなぁ。途中で諦めちゃったけどな。
そうだ。お前の仕事ってなんだっけ?
親友のくせにソイツの職業さえ知らないなんておかしいな。

嗚呼、久々にお前に会いたいな〜。
なんて、柄にもないこと言って、お前は鳥肌がたつかもしれない。
でも本心だぞ?
多分その時には言いたいこと全部言える気がする。

やっぱり最後まで話が浮かんでこなかったな。
悪い。今度はちゃんと考えておくから。
お前も無理せず、しっかり歩いていってくれよな。

じゃあ、また。

最高の親友より









飾り気のない白い封筒に封をして、舌先でペロリと舐めた切手を貼る。
住所と名前を間違えないように、できるだけ丁寧に書いた。
「よし」
自分にしか聞こえないような音量で呟くと、手紙を手に立ち上がった。
早く。早く。と心が急かす。
小さなアパートの部屋から飛び出して、階段を勢いを付けて降りる。
向かうはもちろん昔ながらの郵便局へ。

その郵便局はあまり人のいない小さな郵便局だった。
だけどもこの近所は皆ここを利用している。
もちろん俺も。
ちょっと錆びたポストの中に俺の手紙が落ちる。
とりあえず一息ついたから、のびをするのと同時に空を見上げた。
「おぉ〜。青いなぁ」
ポツリと心の呟き。


世界の共通点といったら、空なのだと思う。
何処へ行っても、空はただひとつ。
繋がっている。
俺の場所から、親友の場所までも、ずっとずっと繋がっている。

だから、空を見上げれば、思い出す。
友のこと、伝えたいこと、いつかの思い出。
その度に同じ事を心の中で呟く。



友よ、ありがとう。









終わり










これすごく好きな曲です。
空も好きだし。(だから小説のなかにはよく出てくる)

いつでも見上げる空色はふるさと
僕らの心で変わらないもの
友よ ありがとう 今までもこれからも
ずっとみんなで歩いて行こう

この歌詞がいいです。
心に染み渡ります。
牧野ー!柚ー!ペロペロー!それと皆ー!!!
これ聞かせたい。ホントに。

テーマ:自作小説 - ジャンル:小説・文学


嗚呼。燃えるゴミの日はいつだったけ?




046 素晴らしき生かな?





ギュっとゴミ袋の口を縛る。
何日もゴミを捨てていない。
だけどこのままじゃこの部屋はゴミ屋敷みたいになってしまうだろう。
ダルい体を必死に動かした。
ふと目にとまった目覚まし時計。電池がきれて針が動いていない。
羨ましいと思ってしまったのは本当だ。
できることならこのまま布団に倒れ込んでしまいたい。
ああでも、この布団も何日も干していないかもしれない。
最後に干したのはいつだったけ?
忘れた。

布団を干す為に閉め切っていたカーテンと窓を開け放した。
少し冷たい空気が俺の肌をかすめる。
「......」
なんとなく見上げた空は、まさに雲ひとつないというものだった。
俺は両手に抱えた布団を手早くベランダの手すりに掛けた。
そしてまた空を見上げる。
当たり前だが、空の様子に変わりはなく、快晴だ。
「嗚呼」
かゆいわけではなかったけれど、頭をかいた。
「なんか、ねえ...」

漏れた溜息の、生暖かい空気は、つめたい空気と混じって消えた。


広げっ放しだった布団もなくなって、少しすっきりとした部屋に残る、パンパンに膨らんだゴミ袋とだらりとしている自分。
いったいどちらが本当のゴミだろうか。

「こんなはずじゃあ、なかったんだけどなぁ」
まだ、“マシ”でいられたころが懐かしい。
「また、バイトさぼっちまった」

部屋に取り残されたゴミ袋をどうにかしなきゃ、と俺は立ち上がった。
確か今日は燃えるゴミの日だったはず。
ゴミ袋を手に、ガチャとドアを開けた。
靴のかかとを踏んで行った。
階段が無機質な音を聞きながら降りて行く。

ゴミ置き場に着くまで、誰とも顔を合わせなかった。
子供は学校へ、奥さんたちは掃除でもしているのだろうか?
それなりに皆、忙しいのだなと思う。
きっとこんなことをしているのは、俺だけだな。
苦笑して、部屋へと戻った。

戻った部屋は、先ほどまでゴミに埋もれていたとは思えないほどスッキリしていた。
ふう。と、安堵の溜息をつくのと同時に、ケイタイの着メロが部屋に響いた。
(...何だよ)
画面を見れば俺の彼女からだった。
「...もしもし」
『ちょっと!なんで連絡なかったのよ!?バイト先にも電話したんだよ?なのに休みだーって言われるし、ケイタイに電話してもぜんっぜん出ないし!!』
もしもし。の「も」の部分を言う前にキーンと響く声が聞こえた。
思わずケイタイと耳をはなしたが、すぐに戻した。
「悪い。ちょっと充電ずっとしてなかった」
ちなみにこれは本当だった。とはいっても、面倒だったからだが。
それでも彼女はすぐに反論をした。
『何それ!?バイトにも行かないで!』
「疲れてたんだよ」
精神的に。
『それに忘れてるでしょ!!?』
「何を」
『あたしの誕生日よ!!祝ってくれるって言ってたじゃない!!』
電話の向こうで血相変えて叫んでいるであろう彼女。
そんな彼女に気がつかれないように俺は溜息をついた。
そして、
「ああ...そういえば」
『そっ、そういえばって』
「忘れてた。忘れるほどのことだった。他に気を取られるほどのことだった。それだけだ」
そこまで一息で言うと今度は彼女に聞こえる程度の溜息をついた。
『そんな...』
どうやら彼女にはそれがこたえたらしい。
声が震えている。
だが、
『もう知らない!!』
耳に響く声とともに電話は切られた。
俺は切られたケイタイをしばらく見つめていた。

ゴミのなくなった綺麗な部屋と、重荷のなくなった身軽な自分。
「嗚呼」
俺は、必要以上のものを背負っていたみたいだ。
あんなにも苛々していた青空も今では、スッキリとした気持ちで眺めている。
俺は思い切りのびをした。
そしてひとり、呟くように、



「素晴らしき、人生かな...?」






終わり







ウチの話って無理やり終わらせたようなのが多いよね。

テーマ:短編小説 - ジャンル:小説・文学


秘密の扉はこの街のどこか。
開店時間は、あなた。あなたの訪れる時。
喉を掻きむしって、まだ満たされていないんでしょう?
いつも同じ役を演じている自分に飽き飽きしているんでしょう?
ここはそんな者たちの集う場所。





039 CLUB UNDERWORLD






また上司に叱られた。
原因は書類のミス。
そのミスというのはほんの小さなことだった。
例えば、唇にする「キス」と魚の「キス」を聞き間違えたようなことだ。
それだけど、生死に関わるようなことをしたかのように怒鳴り散らされたのだ。
気が小さい。
そう心の中で呟きながら、表ではペコペコと頭を下げる自分。

ああ、くだらない。

こんなヤツになんで頭を下げなきゃいけないんだ。
地位もそんなにないくせに(俺よりかはいいが)偉そうなことばかり口にする。
お前はさっさと家に帰ってバカみたいに寝てろ、クソ上司。

上司の怒りもいったんおさまって、昼休みがきた。
昼食を食べようと、食堂へ向かった。
適当に食べるものを手にとり、いつもと同じ、窓際の日のあたりの最高の席に座る。
静かで、落ちつくこの場所が好きなのに、アイツときたら...
同期の男がわざわざ同情しにきやがった。

「今日は災難だったなぁ」
苦笑しながら話しかけてくるのだ。
多分、今ここに包丁があったなら、遠慮なくコイツを刺していたに違いない。
だが俺はニッコリと微笑んでみせた。
「いや、いつものことだからな」
すると男は「まあ、次頑張れよ」と言って去っていった。
大きな溜息を漏らす。

うんざりだ。
こんなヤツらと俺はつるんでいたのかと思うと吐き気がする。
ああっ。今鳥肌たったし。
最悪だ。
早く帰りたい。





徹夜こそしなかったが、その日はあのクソ上司に書類という名の嫌がらせを貰い、悪戦苦闘していた。おかげで予定よりも遅くなってしまった。
チッ。いつかその立場逆にしてやる。

今日はウザイ友人の誘いも振り切って一人で帰った。
だけど、フラリフラリと歩いて行けば、辿り着いたのは繁華街の一角。
(いつのまに)
誘い込まれるようにその店の前に立ち止まった。

“CLUB UNDERWORLD”

ここに来た覚えはない。
ネオンの看板をじっと見つめていると、中から誰か出てきた。
「あら、あなた」
女性だった。
少し露出度の高い服を身にまとった、長い黒髪、漆黒の瞳の女性。
「ここ...は」
しどろもどろに俺が聞くと、彼女はフッと笑った。
「あなたも導かれたのね」
笑った顔は、何か企んでいるような、まるで化け猫のような雰囲気だと思った。
化け猫は失礼かもしれない。
魔女につかえる黒猫あたりだろうか。
「導かれた?」
「ええ。あなた、疲れている顔をしている。今日は厄日だったのかしら?」
「まあそんなところだ。上司にこっぴどく叱られてね」
「フフ、やっぱり。そんな顔だわ」
妖し気な雰囲気を漂わせているが、俺の口は魔法にでもかかったかのようにスラスラと本音が吐き出されていった。
「それじゃあ、あなたは“お客様”といったところね」
「俺が?」
「そうよ。ここは世間にうんざりした者たちが集う場所」
「へえ、興味あるな」
「じゃあ、よっていく?きっと気に入るわ」
「ああ、そうするよ」
一歩、足を進めた。
すると彼女は、その妖し気な微笑みのまま後ろにある扉へと招き入れるように言う。




「ようこそ“CLUB UNDERWORLD”へ」



中から、先ほどまでは聞き取れなかった騒ぎ声が聞こえる。




「今宵、あなたの欲望全て満たしてさしあげましょう」











終わり








なんかスラスラと書いた分なんか...ねえ。

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ここは 深い 森の中




053 音のない





「ぜってー有名になって帰ってきてやる!!」
そう言い捨てて飛び出した家に、二度と戻ることはなかった。
否、戻ることが出来なかった。
それは、本当に有名になって、帰る暇がなかったからではない。むしろその逆だ。勢いにのって上京したまではよかったのだが、厳しい現実と体当たりして見事に崩れてしまった。

俺の夢とは、“世界的に有名なミュージシャン”になること。
なんて、子供じみた夢だ。今はそう思う。
学生の頃、少ない小遣いを必死にはたいて、やっとのことで買ったギターも、今では小さいアパートの更に小さい部屋の片隅に、ぞんざいに置かれてある。
そのギターは、もう何年も手入れをしていなくて、ホコリを被ってしまっている。俺はそれをいつもボケーッと眺めている。


「直人君、これ目通しておいて」
俺は今、ごくごく普通の会社員として働いている。
「はい」
特に嫌いな上司もいないし、辛い仕事でもない為、そんなにストレスはたまらない。
毎日パソコンと書類に囲まれる日々。
辛くはないが正直つまらない。
同じことの繰り返しで、過ぎていくこの日常。

「あれ...直人君、その歌好きなの?」
「え...?」
同期入社した春香が俺に聞いた。
何が、と俺は答えると春香は「だっていつもその鼻歌うたってるじゃない」と言うのだ。

ああ、またでていたのか。
その癖。

ひとつ溜息を吐きながら俺はギィと少し軋む椅子に背をもたれる。
「...うん。好きだな。この曲」
この言葉に嘘はない。
だってこの曲を聞いてあの夢を追いかけ始めたのだから。
「へぇ。実は私もこの曲好きなんだ」
「そうなんだ」
「うん。いいよね」
共感できることがあるのはいいことだ。
なんとなく左胸あたりが温かく感じたのは気のせいだろうか。


会社も、定時で帰ることが出来た。
今日は満月だなぁとボンヤリと思いながらひとり家路を急ぐ。
すると、駅前の大通りで騒がしい音がしていた。
何だろうかと近寄ってみれば、そこには大学生くらいの歳だろうか。数人の男子がマイクやらギターやらを持ち、歌っているのだ。

一度立ち止まったが、なんとも居心地の悪さに負けてすぐにその場から立ち去った。
自然と歩く速度が速くなったのは気のせいではないだろう。

(ああ、なんて、悪いものを見た)

雲に隠れそうな満月が、そっと俺を見下ろしていた。




ああいう、キラキラと輝いているものを見ていると、苛々する。
きっとこれは、夢に破れた者の運命なんだ。と思い込ませている。
俺を照らすのは、弱くぼんやりとした月の光でもない。

ならば、何だーーーーー...?

答えすら、照らし出されない。




自分の部屋に帰るといつも軽く夕食を済ませて風呂へと直行。
ここまではいい。
だけど、風呂からあがり、小さい部屋には大きすぎるソファにドスッともたれると、いつも目に飛び込んでくるものがある。

ギターだ。

ほこりを被ったそのギター。見ると、夢だけを追いかけていたあの青春という名の日々を、今でも鮮明に思い出せる。
あのころの自分は、いったい何処へ行ってしまったのだろうか。
息がつまるくらいに考えた。
実家を出たのは高校を卒業した日だ。
もともと大学には行かず、出ていくつもりだったし、荷物はまとめていたから、親の反対すら耳に入らず飛び出していった。罵声を背に浴びながら振り返らずに去った家に、戻る気はない。
戻ったところで、今更俺に居場所はないだろう。
散々嫌味を吐いたんだから、向こうも戻ってくるとは思っていないだろう。

胸ポケットに入ったクシャクシャになりかけの煙草を一本取り出して火をつける。ライターを使ったが、どうやらこのライターももうすぐ替えなくてはいけなくなりそうだ。
煙を吐きながら窓の外の月を眺める。
窓の外には高いビルやマンションが建ち並んでいる。
コンクリートジャングルとはよく言ったものだが、それよりも似合う言葉を俺は知っている。

“森”だ。

ビルやマンションが木々のように立ちはだかり、日の日差しさえも拒む。
道も入り込んで、一度迷えばそのままずっと彷徨い続けてしまいそうな場所。
それだけではない。
ここは、俺みたいな、夢に破れた者が集う森でもある。
今でも夢を追いかけ、笑っている人を見ると、自分の中のどす黒い感情を確かめさせられる。

なんで、
俺は叶わなかったのに。
なんでそんなふうに、笑っていられるんだ。

ぐしゃぐしゃと頭を掻きむしるようにすると、髪が漫画に出てきそうなほどに鳥頭になった。だけど、そんなことは気にしない。
「...クソっ...」
小さく悪態をついて寝転がる。
このムシャクシャした気持ちも、多分悔しさからなるものだろう。
わかってる。
あの学生は悪くない。
むしろ関係などないのだ。
俺が勝手に諦めて、勝手に嫉妬しているだけ。
ああ、だけど。

「苦しい......なぁ」

今見えるのは、少し汚れた天井。よく見れば、ポスターでも張っていたのだろうか、ピンで開けたような小さい穴がある。
唇を、噛んだ。
それは、苦しかったからでもあったし、悲しくもあって、悔しくもあった。
「本当なら...」
今頃、忙しく世界を飛びまわっていたはずだったのに。

こんな日は、酒でも飲んで気を紛らわすのがいいのだが、そんな気にもなれず、ただ。
音もなく、涙を流した。







こんなはずじゃなかった。
助けてくれる者などいない。
(わかってる)
どこから間違っていたのか。
いつのまにか、迷ってしまっていた。



深い、深い、森の中。
彷徨っている。
今も、いつか、抜出せることを願って。














おわり 










ほ、本当は「自分はここにいるよ」ってことを書きたかったんだけど。
ごめんなさい。言い訳だね。

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023 空想科学





ねえ、知ってる?
もう犬は、呼吸をしていないんだって。
冷たい皮に付け替えられて、合成音の鳴き声で、暮らしているんだって。
きっとそのうち、人間は生み出すだろうね。
呼吸を忘れた完全なるモノを。
ならば僕も変えてくれるかな。
傷のつかない心の蔵。
気持ちの悪いと言われたこの顔も、
きっと、ハリウッドスターのような顔に替えてくれる。
そしたら君も、きっと振り向いてくれるはず。
ああ、それだけじゃ駄目だ。
人の温もりを忘れたこの場所にいては、僕は怪我をしてしまう。
言葉のナイフを振りかざされる。
きっとあちらこちらには地雷がばらまかれてあって、
踏んだら僕は木っ端みじんだ。
だからね。体ももっと、強いものに。
たとえばほら、体操のオリンピック選手みたいな、しっかりした体を。
きっと付け替えてくれる。
僕の駄目なところ全部取り替えよう。
そしたら完全になれるよ。
強い僕。
泣かない僕。
動揺しない僕。
そしたらきっと、あの子のことも。







ああそれがいい。
きっとそれが理想。僕の求める理想像。








終わり








この曲、整形とかって感じがします。
でもちょっと歌詞とは違うかな。
よかったら探して聞いてみて下さいまし〜。
っていうかこれは小話だね。

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僕は幼少の頃から内気で弱い人間だったのだ。







047 朱いオレンジ







言葉を出そうとすると、いつも喉が灼けるようにように熱くなって、結局口から吐き出されるのは、決まってかすれて小さな音だった。声にならない音だった。それはきっと風の音のように一部の草花にしか聞く事はできなかっただろう。風のように、綺麗な音ではなかったけれど。
けれど、声がでないわけではなかった。
本音が言えなかったのだ。
嘘なら、いくらでも口から出ていった。
「は?バカじゃねぇ?死ねっての」
『へえ、そうなんだ。仕方ないよね』
「だよな。アイツマジでウザイし」
『違うよ。正しいのはあの人』
そんな風に、出ていった言葉と、正反対の事を思っていた。
吐き出されなかった言葉たちは、何処へも行けずに、今も僕の胸の中でうごめいている。のたうち回るように、暴れるように、「外へだして!」と叫んでいるように。
だけど、その心から逃げるように、僕は耳を塞いでいた。
「.....うるさい」
本当はただ、怖いだけ。
「うるさい」
人に嫌われる事が、怖いだけ。
「うるさい!」
頭の中がぐちゃぐちゃになる。
ねえ、どうすればいい?


それは、学生だったときの話だ。
と言っても、大人になった今でも変わっちゃいないが。
嘘をつく日常は終わらない。
「ねえ、今日の昼飯どうするよ?」
僕は今、大学にいる。
とても有名というわけではないけれど、それなりに勉強はしていたから、まぁまぁいい大学には入れた。
「僕は...今日弁当だから」
ぽつりと、僕は言った。
これは嘘だ。
「マジ?俺何もないからちょっとちょーだい」
いつもつるんでいるふたりのうちのひとりが僕に言った。
ダイだ。これはあだ名。本名は大輔。
ダイはいつだって僕に絡んでくる。
ああ、だから嫌なのに。
「だめ」
「はぁ?何だよ、ケチ!!」
僕が何か言うと、すぐに返事が返ってくる。
僕は、返事を考える事すら遅いというのに、何故そんなにも早いのか、わからない。
「お前もお前だ。昼飯くらい自分で買え」
ふたりのうちのもうひとりが言う。
もうひとりはジュン。あだ名もなにも、名前が淳だ。
だけれど、僕にはあだ名で呼ぶ事も、名前で呼ぶ事もできなかった。否、できないでいる。どうしてもつっかかるのだ。だからいつも、相づちくらいしかうたない。
「む〜...しゃーねぇな。じゃあ一緒に学食で食おうぜ!」
「あ、それはいいな」
「.........ごめん。僕無理」
ふたりが早速学食へ向かおうと足の向きを変えた瞬間、僕は言った。
「何でだよ?」
「まだ、課題になってるレポート書けてないんだ」
「レポートって...確か期限が...」
「今日の午後二時まで」
僕は頷きながら言う。
するとジュンは慌てたように言った。
「ヤバいじゃんか...じゃあ、仕方ないな。頑張れよ」
「うん」
ああ、よかった。ごまかせた。
僕はふたりと別れて、中庭の、僕だけの場所へと急いだ。






いつまでこんなふうに、嘘をつきつづかなければいけないのだろう。と考える。一番簡単な解決方法はわかっている。僕が嘘をつかなければいいのだ。だけれど、そんなことをする勇気が僕にはない。
嘘をつかないこと、つまり、僕のすべてを曝け出すことだ。
本当に純粋な人間なんていやしない。
それは誰にだってあてはまる。もちろん僕にも。
純粋な部分と汚い部分が混じり合って今の自分がいるのだ。
僕なんかは、思い切り歪んでいる人間のいい例かもしれない。
だけれど、まだあの頃よりかはマシなのだと思う。
あの頃は、ただ否定していただけだったから。
「でも、変わってないんだろうな」
本当は、今でも否定している。そうじゃないと願っている。

「何が変わんないんだ?」

「!!」
後ろから突然ジュンの声がした。
僕は驚き、後ろを振り向いた。
「な....んで」
「つかやっぱレポートなんか無いんじゃねーか!!」
僕のつぶやきになど気にも止めずにダイは「うがー!」という勢いで僕に襲いかかってきた。それは、怒りにまかせてだったのだろうか。僕にはわからなかった。
唖然としていた僕にダイがのしかかってきて、芝生の上に倒れ込んだ。
「...っう.....」
ふたり同時にうめいた。
それを見てジュンは苦笑いをしている。
ダイはそんなジュンを見えていたのか、すぐに起き上がると、
「笑ってる場合じゃねえだろうが!!」
と叫んだ。
本当だ。はやく退いてくれ。
「おい、退いてやれって」
ジュンが言ってくれたが、ダイは断固として反対をしている。
「駄目だ!!今日はリョウが本音を吐くまで退かねえ!!!」
ダイが、僕の名を口にする。
どういうことだろう。
僕はそう思うことにした。
「嘘つくんじゃねぇぞ!」
何のこと?
ああ、うん、そうだね。これも嘘だ。
「俺を騙せると思ったら百年早えーんだよ!」
じゃあ百年たったらいいってことか?
ああ、そのころにはもう僕もダイもおじいちゃんだな。

いつの間にか、ダイは僕の胸ぐらを掴んでいた。
ユッサユッサと縦に頭を揺らされてクラクラする。
ああヤバイ。離してくれ。
今頭を巡るのは、そんな言葉たち。

「俺はなぁ!お前に嘘つかれたのがいっちばん嫌なんだよ!」
だって、嘘をつかないと、怖くて怖くて仕方がない。

ダイは僕を揺らすのをやめた。
目の前がぼやけている。
それは、揺らされていたからだけではないのかもしれない。
僕は自由な両腕で目元を隠した。

「なあ、お前が嘘をつく理由はあるのかもしれないけどさ」
ジュンがダイとは正反対の、落ちついた声で話し始めた。
「だけど...少しくらい本当の事話したっていいじゃんか」
「...そうだそうだ。俺たち“ダチ”だろ?」
ジュンの話にダイも加わって、僕に言う。
歯を、食いしばった。
「“ダチ”って...何だよ」
僕は知らない。
必要だと思った事も、ない。筈だ。
「なんなんだよ...」
小さな声だった。
やはり、喉が灼けるようになるのは変わらない。
それでも少しだけ和らいだように思えるのは気のせいだろうか。

「何って...ダチはダチだろ」
ああなんでだろう。
目尻が熱い。
「わかんない.....わかんないよ」
涙は流れていただろうか。
ふたりの顔は見えなかった(見れなかった)けれど、小さく、笑うような溜息が聞こえてきたのは確かだ。
「賢いリョウ君でもわかりませんか」
「ならしょうがねえな」
ジュンとダイが何か話している。

「教えてやるよ。俺らがな」

同時に言ったふたりは、きっと笑っていただろう。
蔑むような顔じゃない。
眩しいくらいの、笑顔だっただろう。







綺麗なもの、
歪んだもの、
僕にはある。
ただ、曝す事が怖くて。




なあきっと、きっと今度は言える筈だから。
どうかお前たちで僕の鎧を溶かしてくれよ。













ああ僕を返して下さい。









終わり









二日かけて書き上げました。
最初は恋人とかで書こうかな〜とか思ってたけどやめた。
なんとなく友情モノでいいじゃないか。と思ったんで。
この曲は好きですね。
っていうか小説の中に歌詞いれちゃっていいのか!?

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朝、昼、夜、朝、昼、夜、朝、昼、夜...
あれ?今はなんだろう?
朝なのだろうか。昼なのだろうか。夜なのだろうか。
光はいったい、どこにいったのだろうか。




097 鉄槌






この国はとても平和な国として有名だ。
“表向き”は、だ。
表があれば裏もある。
ここは、大きくて綺麗なお城の地下。
決して光の射さない、罪人の場。
そうつまり、“牢屋”というやつだ。
罪を犯した者は皆(特例がないかぎり)ここに放り込まれる。
そして一生日の光を浴びられなくなるのだ。

僕も、その住人だ。


「おい、飯の時間だ...起きているのか?」
ピクリとも動かない僕に、監視は気になったのか、そう声をかけた。
「起きてるよ」
僕は小さくそう答えると監視は「そうか」と呟いて僕のいる“空間”の鍵を開けて入ってきた。そのすきに、逃げることも可能なのだけど、出来たとしてもすぐに外で捕まり、罪が重ねられる。それに今はそんな気力さえない。他の者たちだってそうなのだ。ここには本当に“生きている”人間などいない。いるとすれば、監視の人間かぐらいのものだろう。
僕が座っているすぐそこに監視は食事を置いた。
食事と言っても、小さなパンと冷めたスープがほとんどだ。
飽きる事を通り越してもうどうでもいいのだけれど。
「ほら、食べないのか?」
外へ出た監視は僕に対してそう問うた。
僕は無言でパンへと手を伸ばした。
小さなパンをさらに小さく千切って口へと運ぶ。
その繰り返し。
だけど途中でピタリと止まり、僕の口は監視に問うように言った。

「今、いつなのかな」
すると監視は「何がだ?」と逆に聞いてきた。
僕は自分だけに言い聞かせるような音量で言う。
「今は、朝なのかな。昼なのかな。それとも夜なのかな」
監視は煙草に火をつけてから僕にこう答えた。
「夜だ。外はもう真っ暗だ」
そこで僕はやっとまともに監視の顔を見た。
まともに、と言ってもぼんやりと闇に浮かぶ輪郭しかわからなかった。
「ここと同じような闇?」
「いいや。違う」
一服する監視に僕は小さく、本当に小さく、首を傾げた。
すると監視はフー、と煙を吐いてこう言った。

「完全な闇じゃあない。外には月があるからな。それに星もある」
「それじゃあ、明るいの?」
僕はまた問うた。
もう、明るいという感覚さえ覚えていないのだけど。
「いいや。一つ一つの光は目だたない。だが星は数多とあるからな。月は一つだけれど。その光が一つになれば、足下くらいは照らされるさ」
監視の言った言葉は、僕には上手く理解できなかった。
無理はないと思う。
「でも...ここよりマシなんだね」
なぜなら、ここには、足下を照らす光すらない。
「ああ」
監視は煙草の煙と一緒に吐き出した。


ここに入れられてから、どれだけ経ったのか覚えていない。
「夜明けが来ても...ここに朝は来ない」
僕は耳を塞いだ。
塞がなくとも、聞こえるのは僕の声くらいなものだけれど。
「春が来ても、ここに花は咲かない」
「...」
監視は黙って聞いていた。
「夏が来ても、ここでは暑さは感じられない」
感じるのは、恐怖。
「秋が来ても、冬が来ても...っ..ここには届かないっ!」
声を殺しているつもりだった。
だけれど、口は全てを吐き出そうとして、僕の声は空間に響いた。


「ねえ...僕は生きてるの?」
こんなふうに、罪人が狂う事は珍しくないのか、監視はただ黙って聞いていた。
「...これが“罰”なの?」
自分が生きているのか、ここにいると疑問になる。自分はちゃんと呼吸をして、何かを見て、触れて、確かめているのか。ここにあるのは恐怖と不安。
「これが...僕の犯した“罪”と同等なの?」
ならば、自分は、なんてことをしてしまったのだろう。
「そんなこと、私は知らないさ」
そこで、監視が口を開いた。
丁度、煙草の灰が床に落ちたところだった。

「私は一介の使用人さ。王の命でこの役についている。私も一日の半分をここで過ごしている。ここは罪人の場所でもあり、狂った者たちの場所でもある。君のような者は少なくないが....そうだな。この場所にいることが罰なのだとしたら、それと同等なのは死刑よりも思い罪しかないだろうな」

光の届かない場所で、毎日同じ食事をとり、狂ったように生きる。
「僕はそんなことをしてしまったの?」
「わからない」
「...怖いよ」
「そうだな。でも、生きてなきゃいけない」
「なんで?」
「わからない」
「外は幸せなのかな」
僕は、苦しいけれど。
監視は「ああ」と小さく答えた。
「人は時に、誰かに罪を押しつける。自分の為に。その被害者が、君だったのかもしれないな」



光の届かぬ場所で、そんなふたりの声が響く。
低く、低く、響くその音はまるで、自らに下される鉄槌のように。
いつまでも響いていた。









終わり








暗い話でした。
ホントはもっと書きたかったです。
でも上手くまとまらなくて。
駄文です。日々鍛錬が必要ですね。

ところで、私はテスト勉強そっちのけで大丈夫かな?

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ヒーロー、今どこにいるんだい?







027 ラスト オブ ヒーロー







学校っていうのは、イジメをする恰好の場所だ。
教師という大人はいるが、アイツらはただいるだけだ。
のんびりと過ごすアイツらにはわからないのだろう。
学校がどんなに過酷な場所だということを。


大人の視界に入らない場所なんて探せばどこにだってある。
トイレ、体育館裏、部室。他にもあるだろう。
「ってめぇ...うぜぇんだよ......!」
今時、リンチなんて珍しい話じゃない。
相手が血だらけになってでも、気晴らしをするヤツらはいくらでもいる。
被害者は誰かに話せばどんな目にあうのかわかっているから何も言わない。
気がついた他人も、大抵は見て見ぬ振りをする。
僕だってその一人だ。
今、野球部の部室の中で、二年が野球の上手い一年を妬んで「しつけなきゃな」を理由に殴っている。僕はテニス部だからよくは知らないけど。
野球部の部室から何かを叩き付けるような鈍い音がしきりに聞こえてくるから、ちょっと覗いてみたらそんな状況だったわけだ。
二年たち、つまり加害者たちはよっぽど気が立っていたのか、部室のドアは開けっ放しで、中は丸見えだった。
僕は一度部室の前で立ち止まった。
だがそこから動けずにいた。
助けに入ったら、速攻で僕がイジメられる側にまわるのだ。
それだけは避けたい。
どうしたものかと、部室の前で立っていたら、横から声がとんだ。

「オイ、そろそろやめろ」
そう言ったのは同じクラスの吉田宏昭(よしだひろあき)だった。
「あ?んだよ...ヒロか。邪魔すんなって」
彼はヒロと呼ばれている。これは男女問わない。
「邪魔じゃなくて忠告だっての。もうすぐ先生来るぞ」
「マジ?」
「マジ。用具の確認だとよ」
「ハァ?今までんなことなかったじゃねぇかよ」
「知るかよ。彼奴気まぐれだからな」
ヒロがそこまで言うと連中は小さく舌打ちして、一年を睨みつけて「今度生意気な事したらコロス」と言ってそそくさと逃げていった。
一年はまるで蛇に睨まれた蛙のように固まってしまっている。
ヒロはそんな一年に歩み寄って手を差し伸べた。
一年ははじめ、怯えてように後ずさったが、ヒロが「一人で立てるか?」と心配そうに聞くと安心したのか、大人しくヒロの手につかまった。
「あ、ありがとうございます」
「ん?ああ、別にいいよ。お前こそ大丈夫か?」
「は...ハイ」
一年はそんなに怪我は無かったらしい。
それを確認したヒロは「そっか」と小さく笑った。
「じゃ、気をつけて帰れよ」
「ハイ!...さようなら」
その言葉を最後に一年は道具を持って早足で帰っていった。


僕はそこでヒロに声をかけた。
「すごいね」
するとヒロはこっちを向いて「何が?」と首を傾げた。
「何って、だってあの一年を助けたんだよ」
「ああ、あれ?」
僕は頷くとヒロはフー、と、溜息かそれとも何か別のものを吐き出したようにして、呟くように言った。
「俺は、正しいと思うことをやっただけだよ」
ヒロは学級委員でもあり、生徒会に入っている。
人柄もよくて、皆から信頼をうけている。
つまりは“人気者”だ。
「それがすごいんだよ。僕はできないから」
苦笑しながら僕が言うと、それまでの空気が一変した気がした。
否、した。

「お前、あれ見てどう思った?」
あれとはつまり“イジメ”のことだろう。
僕は笑顔で答えた。
「ああ。いけないことだよね」
「じゃあ、何で何もしなかった?」
そう答える事を予想していたのか、ヒロはすぐに次の質問をした。
「だって...」
「自分がイジメられるから?」
まるで僕がどう答えるのか、全部しっているように、口ごもった僕の代わりにヒロが言った。僕は顔を崩さずにそのままでいた。
「それか、誰かが助けてくれるとでも思ってか?」
「...実際に、ヒロは助けてくれたじゃないか」
今度は完全に溜息だと思う。
ヒロはうんざりだ、という顔をしている。

「ただ指をくわえて見てるだけなら誰だってできるんだよ」
ヒロは眉間にしわを寄せて僕を睨みつけた。
とたん、僕の体は金縛りにあったかのようにカチンコチンに固まった。

「俺は正義のヒーローじゃねぇんだ」

こんな怖い顔をしたヒロを僕は見た事が無い。
いつだって皆を笑わせて、面白いやつだったのに。

「“助けてくれ”って言う前に自分でなんとかしろ」

ヒロは僕の横をすり抜けて行った。
僕の顔は見ないまま。
最後にこう言った。

「サイテーだな、お前」








この星に呆れて出て行ってしまったヒーロー。
もうヒーローは僕らを助けてはくれない。


ねえヒーロー。
僕らもう駄目なのかなぁ?

“俺に頼んじゃねぇよ”

どんどん幸せがなくなっちゃうよ。

“ヒーローはどこにもいない”



あの時、ヒロはこの星にいたヒーローの言葉を伝えてきたのかもしれない。








終わり







なんて微妙なんだ。
ヒーローだからヒロ。くだらないですね。

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ねえ、もう、消えてしまったけれど。





071 うたかた





初恋は叶わないと言うが、そんなものは、本当に叶わなかった者に対する慰めの言葉だと思っていた。だけども、それはあながち間違いではないと、今は思う。
それは、今わたしが慰められたいから、なのかもしれない。
まだ頭の中に響いている。
あの日、あの人のと知らない誰かの笑い声。
まるで幸せそうな...実際、幸せだったのだろう。そんな笑顔で、あの人は誰かの肩を抱いていた。周りでは彼らの友人や親族がふたりの幸せを願っていた。

結婚式

きっと、ふたりを祝福していないのは、わたしだけだろう。
彼らの輪の中から、わたしは一歩離れた場所にポツンと立っている。
わたしと彼の距離は数メートルのものだろう。
ああ、だけど。


こんなにも、遠い。


少しでも期待していたわたしが悪かったのだろうか。
ひとり心の中で「もしかしたら」と願っていた。
だけど「もしかしたら」なんてなかった。
実際彼は今こうして彼の愛しい人と結婚式をあげている。
披露宴の時、わたしは彼に「幸せ者ね」と声をかけた。声は震えて、喉はあっという間にカラカラに乾いてしまった。だが彼は気付くことはなく、笑って「ああ。すごく幸せだ」と言った。その瞬間、背中に氷を入れられたようにゾッとし、わたしの体は動かなくなった。
原因は彼のあの笑顔。

ねえなんで。
そんな顔をするの。
わたしには苦痛でしかない。
彼が幸せならばいい。そう思っていた。思い込んでいた。
口の中。喉の奥。いいや、もっと奥深いところで「嫌だ嫌だ嫌だ」と叫んでいる。
カラカラに乾いた喉から吐き出された声は小さく、空気と混じって消えてしまった。

まるで、この想いのように。

あの結婚式の最後、彼はわたしに「お前も幸せになれよ」と言った。
酷いことを言う。
心の中でそう呟いた。
想いが散ってしまった今、何の幸せがあると言うのか。







あの結婚式の写真の中のわたしは、触れればすぐ壊れてしまいそうなほどな顔で笑っていた。あのとき流れなかった涙を、今は懐かしく思う。
もう幸せなんてない。と言っていたわたしだけど、結局一時的なものだった。
だけども、わたしは彼のことを忘れたりはしなかった。
人を愛しいと想うこと。
叶いはしなかったけれど、それを教えてくれた彼を、今も鮮明に覚えている。
あのころのわたしはきっと、泣きながら「さようなら」を言ったと思う。
だけども、あのころよりも大人になった今では「ありがとう」に変わっている。
ありがとう。さようなら。
心の中で呟いて、写真をしまう。




ねえ、もう、消えてしまったけれど。
思い出になってしまったけれど。
わたしはきっと忘れはしない。

愛しい彼から、愛おしかった彼に変わる。
瞬間、泡となって消えた想い(あなた)をきっと。







終わり







はじめました。
お題。
mizu様のお題サイトElegyからお借りしました。
なぜか「ポルノグラフィティ」に反応してしまって...
サイトURLはコチラ↓↓
http://hw001.gate01.com/memories-hagane/elegy/


え〜、ポルノの「うたかた」は好きな曲ですね。
だから一番始めにやったんだろうか。
そこんとこは微妙ですが。
まあ、またやるでしょう。きっと。

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