もう、いっそのこと。





かつての恋人、伊賀葵(いがあおい)に別れを告げられたのは、いつだったか。
「え?今なんて?」
「だーかーらー...別れてほしいって言ってんの」
葵はもともと我が侭で、いつだって突然に話を切り出してくる。
この時もそうだった。
「へえ...また何で?」
「んー、なんかねぇ......」
「ハッキリしないな」
「.........知ってるくせに」
「何が?」
笑顔で、そう言った。
葵はうんざりしたような顔と溜息をした。
「知ってんでしょ?アタシの浮気」
顔は、変わらなかったと思う。
「.........ああ」
やっぱり。と、葵はまた溜息をつく。

葵は顔立ちがいい為に、異性からの告白が絶えない。
だからなのだろう。彼女の浮気癖はずっと直らないのだ。
もちろん俺も知っていた。
「知ってて黙ってたんでしょ?」
「ああ」
「そんなにアタシと付き合いっていたかったワケ?」
ちなみに言えば、葵はとてつもなく自己中心的だ。
俺が黙っていると、葵は疲れた〜とでも言いた気な顔をしてまた言う。
「アタシ、そう言うしつこいヒト嫌いなんだよねー」
ああ、そう。
「ソレが...別れたい理由?」
「そーゆーこと」


彼女は、覚えていないのだろうか。
付き合ってくれと、言ったのは、君からだっただろう?
俺も最初は「そんな余裕ないんだ」と、断った。
だが、それでも諦めきれないと、何度も何度も告白してきただろう?
そのうちに俺は彼女を好きになって、付き合うことにした。
その時の彼女の笑顔は、眩しいくらいに輝いていた。

そのことを、彼女は忘れてしまったのだろうか。


「で」
「ん?」
「ん?じゃないでしょ。別れてほしいって言ってんの」
「ああ、いいよ」
その言葉は、すんなりと喉を通って口から出た。
予想外だったのか、葵は軽く目を見開いた。
「あぁ、そう。以外」
相変わらず、その口調はキツイ。
「何が以外なんだ?」
「だって今までの男はみんなアタシに縋り付いてたから」
彼女の表情が本当に驚いていたので、その話も本当のことだろう。
俺は「へえ」と小さく言ってから、近くのテーブルに置いてあったグラスを持つ。その中には飲みかけのワインが入っている。
「じゃあこれが葵との“最後の晩餐”ってところか」
葵もグラスを持った。
「そんなとこね」
俺は一気にグラスの中のワインを飲み干した。
それを見て葵も飲み干した。
俺は互いのグラスにワインを満たす。
そしてグラスを持ち上げて、ふたり

「これまで、ありがとう」
「どういたしまして」

この、一杯で、最後に。





あれから、数年。
彼女との関係は途切れていなかった。
「平野」
「何だ」
変わったことと言えば、恋人という関係ではなくなって、名前呼びから名字になったことくらいだろうか。
「アンタさぁ」
「だから何だ」
「アンタ...まだアタシのこと好きでしょ?」
俺は、ふー、と息を吐いた。
「さぁ...どうだろうね」
その言葉で彼女は機嫌を悪くしたらしい。
彼女から目線をずらしていた俺を自分に向けさせて、彼女は顔を近づけてきた。

キス、だ。
触れるだけのキス。
俺は拒まなかった。
数十秒、そっと唇を離す。
近くに彼女の顔がある。こんな距離にあるのはいつぶりだろうか。
「.....」
「何だ」
「別に」
俺は溜息を漏らす。
「ちょっと、どいて」
「いや」
「どけ」
「いや」
ハァ。
また溜息。
彼女はフッと微笑む。
「ホント、アンタってしつこい」
彼女は笑う。
まだ、好きなんだ。と笑う。
「一途だと言え」
声が震えていたのを、きっと彼女は気付いただろう。
彼女は嘲笑うように、俺の首に腕を回した。
そして耳元で囁く。


「“スキ”」



嗚呼。
こんなもの、要らなかった。
どうせなら。
もう、いっそのこと。


思い切り突き放してほしかった。




「君は酷いな」







終わり






後書き
別れ話だよ。あぁ〜あ。
葵はサドっぽいね。

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聞こえているよ 本当は
だけど私は耳を塞いだ

手をさしのべればよかったのか
君を抱きしめればよかったのか
路を示してやればよかったのか

わからない わからなかった から
だから

君の“タスケテ”に 耳を塞いだ

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ふざけるな
ふざけるな
ふざけるな

言い始めたら、きりがない。

だいきらい
だいきらい
だいきらい

嫌いだよ。アンタたちなんて。
自分の吐いた言葉に何の責任も持たないで、誰かを傷つけたことさえ忘れ去って、その人が苦しんでいたらまるで邪魔者扱い。
本当に、そうだ。
自分のことを棚に上げて我が物顔で蔓延っている。
他人を蹴落として、嘲笑って、
嗚呼、その中にいる私もダイキライだ。

あの時、アンタ言ったよね?
「何もしないよりマシだ」
って。
じゃあ何でやる時にやらなかったの?
無駄話で盛り上がって、すごく、イライラした。
どうせ同じ事しかしないんでしょう?
なら、相談とか会議なんて必要ないじゃないか。
それともただ話がしたいだけだった?
ならさっさと帰って長電話でもしてりゃいい。

あの時、アンタ言ったよね?
「睨まれたんだよー」
それはアンタが睨まれるようなことしたからでしょう?
何もしたくないからって、近づいてきた相手の目の前でその人を拒んで、他の人に押しつけようとして、睨まれるのも、当たり前だ。
もしそれが自分のことだったら?なんて考えても見なかったんでしょうね。
だから、そんなこと言えるんだ。


ねえ、知ってた?ここにいると、すごく居心地が悪いんだよ。

アンタらサイテーな奴らといる私もサイテー。
何も言えない私が嫌い。
まあ、言っても反論するだけでしょうけどね。
だから。なんだろうね。


ここから、いなくなってしまいたかった。


もうずっと吐き出している。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ

吐き気がする。
でもきっと、そう訴えても、アンタは無視して、踏み潰して、見下すんだ。

今までもそうだった。それからこれからもそうだろう。

ふざけるな
(私は逃げたかったわけじゃない)
ふざけるな
(アンタたちがそうさせたんだ)
ふざけるな

言い始めたら、きりがない。

だいきらい
(いい子ぶってるアンタたちみんな)
だいきらい
(自分の中でしか吐き出せない卑怯な私も)
だいきらい



嗚呼、いったいどこから間違っていたんでしょうか。

気がつけばこの掌には、嫌いなモノしか残っていない。













終わり










あとがき
自暴自棄になってしまいそう。

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バトンが来たんで...



━ルール ━
1:本当のことをかく
2:絶対10人に回す
3:送りかえしてよし!

━━━━━━━━━━━━━━━━

1:誰から回ってきたの?
奏チャンだよ

2:君にとってその人わどーゆ存在?
ポルノ好きの友達!!

3:その人をキャラに例えると?
きゃ、キャラ?わかんないかもしれないかもしれないかも(どっちだ

4:その人のこと好き?
愚問ですな。当たり前。

5:その人を色で例えると?
ん〜。赤かな。

6:その人に一言書いてみよう。
末長〜くヨロシクね。

7:100人(10人に回すらしい)
えっと、mと、柚と、ポン。
ヨロシク!

テーマ:バトン - ジャンル:日記


2

プロフィールの画像。
画質が...(泣

もっと綺麗だった筈...

鋼のロイでした。

裏切られる恐怖と
騙される不安を

超える愛しさを 私はまだ知らない

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貴方は最期まで
その優しい顔で
「さようならと言って」
と 勝手なことを口にしていた

貴方は知らないんでしょう
貴方なしの私など
道端に転がる石ころよりも
ちっぽけな存在なんだと

そんな身勝手な貴方をどうしてこんなにも


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「身勝手な願い」の別バージョンみたいな。

テーマ:詩・ポエム - ジャンル:小説・文学


きっと君は
僕が死んでも
何も変わらず生き続けるでしょう

それでいいんだよ

君は僕の最期まで
その優しい声で
「さようなら また逢いましょう」
と 僕を見つめて

そしてどうかどうか
君は変わらず幸せでいて




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
僕の事などさっさと忘れて、幸せに。

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あれから、どうやって時間が過ぎていったのか、わからない。
先生の話など右から左...それ以前の問題で、耳の中すら通らなかった。


家には無事帰れた.....のだと思う。多分。
身体にところどころ擦り傷が付いていた。いつの間に...
ああ、今はそんなことどうでもいい。
私は階段を駆け上がり、自分の部屋へと戻った。

晶の所へは行かない。
行ったところで、何ができるというのか。
話すことすらままならない気がして嫌だった。
私は絵の具道具一式を乱暴に持って部屋を飛び出した。

行き先は、あの彼岸花の咲き誇る場所。


思えば、私と晶が離れることなどほとんどなかった。
晶とは幼稚園からの付き合いだし、遊ぶと言えばいつも晶がいた。
いつからか、晶が隣にいることは当たり前の事となっていた。
無邪気に遊んでいた頃を思い出して苦笑する。
今も昔も、そう変わってはいないが、流石に大人に近づいていくといつも一緒っていうのは皆に誤解されることもある。一時期、私達は付き合っているとかいう噂が流れたらしい。私は知らなかったけど。だけど晶とは幼馴染みだ。それ以上でも、それ以下でもない。大体、晶にはもったいないくらいの可愛い彼女がいるのだ。その時点で違うことはハッキリしているじゃないか。
だから私がこんなことをしなくてもいいと思うのだが、何故かやらなくては。という気持ちでいっぱいになっている。
自分でも不思議なくらいに。






晶が転校することは母さんも知っていた。
そして「明後日、引っ越すんですって。寂しくなるわね」と呟くように言った。
明後日。
明後日までに、仕上げなきゃ。


ねえ、晶。
彼岸花の花言葉って、他にもあるんだ。
それを教えてあげる。
これを“悲しい思い出”なんかにさせない。






後編へ続く




なんか勝手に中編入れた。

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えーと、もうリンクのほうにはあるのですが、
この度、詩のサーチエンジン(?)に登録いたしましたこのブログ。

詩極
「しごく」と読みます。

まあ、なんか...よろしくおねがいしまぁす。

結局は
妄想でも なんでも良かったの

ただ 弱い弱い私達には
寄りかかることのできる“何か”が欲しかっただけ




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
さっきのは異教徒で、こっちは信者。でした。

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神を求めるなど
なんて かな

ただの想像を 妄想を
求めて

何が得られると云う?



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
私は信教者じゃないから、よくわかりません。

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この僕の身体は
どうやら僕が嫌いなのだそうだ

僕のこの手は 君の手を掴んではくれなかった
僕のこの瞳は 君を映してはくれなかった
僕のこの耳は 君の声を受け入れてくれなかった
僕のこの口は 君に「サヨナラ」を言ってしまった

決して望んではいなかったこと
その“逆”を 望んでいたのに

何故

ああやはり
この僕の身体は
僕が嫌いなのだそうだ

と 呟いてまた君に「サヨナラ」と



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
本当は僕の身体がそうさせたんだ。
そうしてまた僕は君から逃げる。
責任から解放された安堵感に埋もれて、君の涙も知らずに。

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今年もまた、彼岸花が咲く。



人々には忌み嫌われている“彼岸花”だけど、私はとても好きだ。
秋になれば、場所を選ばずどこからでも目を出すそれは、つまり、どこへでも生きていけるということで。私にはその事実が眩しいほどだ。
私にはないものをもっているからなのかもしれない。
私は彼岸花が好きだ。


あれは、数年前の秋。
今年と同じように、彼岸花が咲き誇っていた。


「あ、彼岸花」
そう言って近づけようとする手を止める人がいた。
「駄目だ。この花には毒があるんだぞ」
その言葉を聞いて慌てて手を引っ込める。
その行動にホッとした隣の幼馴染み。
「ったくお前は...目をはなすとすぐ危なっかしいことを...」
「好奇心旺盛って言ってよ」
「ありすぎるのも問題だ」
「ごめんなさ〜い」
「...謝る気、ねぇだろ」
溜息を吐いて頭をかくのは彼の癖だ。
たしか幼稚園のころから。まだなおっていない。
ふと、思い出して笑ってみる。
すると彼は「なんだよ」とつられて笑う。自分のやったことに気がついていないらしい。それもおかしくてまた笑う。
そんなことの、繰り返し。

微笑ましいかぎりだ。

笑っていると、また思い出すことがあった。
「...ねえ、彼岸花の花言葉、知ってる?」
「んー、知らないな」
へえ、賢いのに。知らないことあったんだね。
と、心中で呟いた。
そして少しだけ自慢げに(決して偉そうにはしていない。いや本当に)言った。

「“悲しい思い出”...だよ」

すると彼は笑顔だった顔を少し歪ませた。
本当に、少しだけだったけれど、私には大きな変化に見えた。
「...勉強できないのに、よく覚えてるな」
ふざけたように、彼が言う。
「私は覚えたいことだけ覚えるのー」
頬を膨らませて私は言った。
そんな日々を、ずっとこれからもと、願っていた。



次の日、彼は学校に来なかった。
昨日はあんなにも元気だったのに、と疑問に思っていたが、その疑問は私の担任によって明らかにされた。

「えー、非常に残念だが、このクラスの相澤晶が転校することになった」

へえ、そうなんだ。
最初はそんなふうにしか受け止めることができなかった。
えーと、誰だっけ?転校するの。

「相澤は今引っ越しの準備で休んでいる」

あーそうそう。相澤。晶だ。
って、引っ越し?どこ行く気だろ。

「せんせー。晶クンどこに引っ越すんですかぁ?」
「あぁ、確か東京だったと思うが」

東京かぁ。ディズニー行きたいな。あ、あれは千葉か。
ここは田舎だから行くのに時間ばっか使うんだよね。
でも晶が行くんだぁ。
じゃあテスト勉強手伝ってくれる人いないじゃん。
どーしよ。

晶が転校。晶が引っ越し。晶が東京行く。

そこで、初めてその言葉の意味を知る。
「あきらが...いなくなる...?」




中編へ続く







中書き
タイトルは「まんじゅしゃげ」と読んで、彼岸花の別の呼び方とか?
また彼岸花です。こんどは小説です。
彼岸花好きなんです。ホントに。

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君は君で
僕は僕だ

それ以上でも
それ以下でも ない

だから
だれも

「きみのかわりにしんであげる」

なんて

言えないんだよ




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
誰も誰かの代わりなんてできないんだ。ってことさね。

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たとえ
この身が朽ち果てようとも
わたしの心には

ただあなたひとり



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
幽霊花とは彼岸花の異名です。
そして花言葉に「想うのはあなたひとり」があるのです。

泥団子だって
貴方がつくったものならば
わたしには まるで
キラキラと輝く宝石のようで

窓からみる空は
手をかざせば隠れてしまうけれど
本当のは きっと
両手で抱きしめてみても
つかむことすらできないんでしょうね



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
空って好きだ。

太陽がみえなくても
月が現れなくても
路を踏み外しそうでも

ぼくはちゃんと きみのそばに

見たくない

あの日きみはそう言って
ひとり暗闇の中へと

見るのが怖い
知るのが怖い

見てしまえば
傷つくことを承知でも
手を 伸ばしてしまうから

ああそれならば
見なければいい
目を両手で塞いで

見なければ いいんだ

そうしてきみは今も
ひとり闇の中




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
やばい暗い。
だれか助けちゃれや〜。

見えないんじゃない
見ようとしないだけ

だって貴方は知らないでしょう?

頬をつたう涙を
肌を流れる血を
この喉の渇きを

わかったように貴方は言うわ
『きみのすべてだきしめてあげる』
『くるしみもかなしみもぜんぶ』
知らないからそんなこと言えるのでしょう?

だって全部背負ってしまえば
きっと貴方は潰れてしまう

両手を目一杯広げても抱きしめられないわ
それはまるでこの地にふってくる星のようで
触れたとたんにその熱でとけて消えてしまうんだわ

そんなこと貴方は知らないのでしょう?

ねえ そんな愚かな貴方
それでも同じように
『だきしめてあげる』
なんて言えるかしら?
その重さに耐えきれず潰されて
死んでしまうかもしれないけれど

ねえ そんな愚かな貴方よ
こんな愚かな私を愛してくれるかしら?

ねえあなた
割れた硝子の靴をはいてどこ行くの

逃げ出すのよ
わたしを縛るなにもかもから

ねえあなた
足を真っ赤に染めてなにするの

忘れるのよ
当たり前だと自惚れていたなにもかもを

蒼い空が必ずしも蒼とは限らない
魚は水の中でしか生きられないとは限らない

理屈で埋め尽くされたくだらない世界に
「さようなら」と言って
割れたままの硝子の靴をはいて
アスファルトを蹴って
この手であの星をつかみ取るのよ

理屈が理屈でなくなったとき
わたしは空を飛んでいるだろうね




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
きっと逃げたくなったんだよ。
シンデレラはあんまり関係なかったり...

真っ赤に咲いている君は
必死に刺をかくしていた

わたしはきれいよ
傷つけなんかしないわ
わたしを見て
わたしに触れて
わたしを見て

あれは君の叫びだったのか
それとも願いだったのか

刺をかくす君の手は
真っ赤に染まっていた
ぼくは見て見ぬふりをした

その手の赤も
君の涙も

なにもかも

偽りの笑顔で
偽りの君を咎めることもせず
ただふたり
偽りの薔薇の中

わたしの全てがあなたでないように
あなたの全てもわたしでないのでしょ?

だからほら
歯車は噛み合なくて
ギリギリ と きしんでいる

はじめからわかっていたことでしょうに
手をのばさずにはいられなかったの
ただぬくもりをもとめていたの
だけどもそれがまちがいで

だからほら
つぼみは水を与えられなくて
花を咲かせる前にかれてしまった

さよなら
さよなら
愛しい人よ

さよなら
さよなら
愚かなわたしよ

さよなら
さよなら

おはよう
こんにちは
こんばんは
さようなら
おやすみなさい

ずっと言えたらいいね

太陽に
小鳥に
月に
今日に
君に

当たり前みたいにすぎていく幸せ
ずっとこのままでいよう

手をふって
笑顔で
みんなみんなに
叫ぶように
囁くように

おはよう
こんにちは
こんばんは
さようなら
おやすみなさい

幸せだね
幸せだよ
ありがとう
ありがとう

ずっとずっとこんな日々をすごしていこう

朝起きて、まずはベッドの中でうずくまる。
身体を毛布の中から一ミリでもはみ出せば、体中が凍り付きそうなのだ。それに何よりまだ寝ていたい。
目覚まし時計が耳をつんざくような音を出して鳴る。
うるさくてうるさくて仕方がない。
だけど手を出すのもいやだから耳を思いっきり塞いで我慢をしていた。
そうしたら下からダダダっと走ってくる音がして、この部屋のドアがバン!と開け放された。
「いつまで寝てるんだ!さっさと起きろ!!」
威勢のいい声が小さな部屋に響く。
私はやっとのことで毛布から顔を出した。
「うー...あと5分寝かせてよ〜」
「五月蝿い。どうせ5分後にもそう言うんだろうが」
図星だ。
私は言う言葉を失う。
「さあ、ベッドから出ろ」
「でも〜」
「でももクソもあるか!!」
今私に説教をしているのは紛れもなく私の夫、利昭(としあき)だ。ちなみに私は千恵美(ちえみ)という。って、なんでこんな状況でこんなに冷静に説明できるのか不思議でたまらないんですけど。
と、そんなことをしている間に利昭はカーテンを開けて窓を思い切り開け放した。冷たい風が部屋の中に流れてくる。
私は思わず毛布の中に戻った。
だが利昭はそれを許す筈もなく、毛布をはがすように私から奪い取った。私はギリギリまで毛布を掴んでいたので床に転げ落ちてしまった。いきなり変わった気温に私は凍り付いて床に転げ落ちたまま固まってしまった。
「ほら、目が覚めたか?」
「覚めたけど....」
「けど?」
「寒い、眠い、動きたくない」
「嫌な三拍子だな」
利昭は溜息をひとつ漏らして、私に手を差し出した。
引っ張ってやるから、だということだろう。私はおとなしくその手を掴んで引っ張りあげてもらった。
「.....おなかすいた」
「引き上げてもらって第一声がそれか」
「ごめん。ありがと」
「わかればよろしい」
それから利昭は「ご飯できてるから」と言って私に背を向けた。
その背中が妙に私を苛立たせて、寒さで凍える足で床を蹴って利昭に飛びついた。
予想通り利昭は「うっわ!」と言ってよろめきかけ、それでもなんとか耐えた。
それから背中にいる私を軽く睨みつけた。
「何するんだよ」
少しだけ、いやけっこう怒っている利昭の顔が無償に可愛く見えて、私はやんわりと微笑んだ。それから利昭に向かって、呟くように、それでもしっかりと言った。



「おはよう」



利昭は一瞬目を少し見開いて、すぐに笑顔になって言う。




「ああ、おはよう」





明日もこんな朝でありますように。











終わり







後書き
今だったらこんばんわだよね。
あいさつはたいせつだぜ!!みたいな。

私のとなりには貴方がいて
貴方のとなりには私がいて
幸せだった
幸せだった
手の温もり 抱き寄せられる肩
ゆったりと過ぎてゆく時間

だけれど全てまぼろしで
ああほら貴方のとなりにはあの人が
私のとなりはからっぽで
ただ愛おしいまぼろし
肩を抱かれて雫をおとす

満月に手を伸ばして
抱きしめてみても
つかめるはずもなく
私は水の中で
水面に映る満月
手にすくって
そっと口付けを

ねえカミサマ
この声が届いているでしょうか?
もし届いているのなら、どうかお願いです。
“    ”ください。




胸の前で手を組んで神に祈りを捧げる少女。
それを後ろから眺める者がいた。
金の長い神を後ろでひとつにくくり、白い着物を見にまとっている。髭が所々生えているため、高齢に見えるが、その顔立ちからはまだ若者とも思える。
少女はその気配に気がついて後ろを振り返った。
すると後ろにいた男は言った。
「やあ、何を祈っていたのかね?」
「ええ...それは言えません」
言うと叶えられなくなりそうなので。と少女は言った。
男は少女に歩み寄り、
「何、悩みくらいなら聞くさ」
と、近くの椅子を指差して言った。
少女は最初躊躇ったが、すぐに承諾した。

悠然とした男だと、少女は思った。
動きから見てもそうだが、何かが抜けているということは無く、ひとつひとつを完璧にこなしているように見えたのだ。
「君は神が本当にいると思うかね?」
突然の言葉と、その内容に少女は目を見張った。
ここは教会だ。そんなこと、口にすることさえ許されないのに。
「何を。ここがどこかわかっているのですか?」
「ああ、もちろんだとも」
男は変わらず悠然としている。
少女は一息置いて言う。
「...信じていなければ、このような場所で祈ってはいません」
すると男は、そうか、と微笑み、また少女に問う。
「ではここに来て、神に祈りを捧げれば願いが叶うと...?」
「ええ」
少女は迷いなく答えた。
男は今度、その顔を崩すことなく少女に言う。

「神は人間の、生き物の願いなど聞いてはくれんよ」

その言葉に、少女はまた目を見開いた。
「何を...」
続ける言葉が見当たらず、少女が言葉につまっているとき、男は止めずに話し続ける。

「君は神に何かを願っただろう?強く、叶えてくれと。だがそれは神が叶えなければならないことか?人間とは諦めの早い生き物だ。だからすぐに神に寄りかかるのだろう?必ず叶えてくれると信じ、実際に叶えば“我らの神よ!!”と感謝し、叶わなければ“神は我々を見捨てると言うのか!?”と非難する。馬鹿馬鹿しいとは思わないか?人間の自分勝手な感情で動かされる程、神は優しくはないのだよ」

そこで少女は立ち上がり、叫ぶように男に言った。
「貴方は神をぼうとくすると言うのですか!?」
男は黙って少女を見上げる。
「私達の全てを受け入れてくれる存在が神だと私は信じているのに!」
そこで男はまた口を開く。
「では神が何かしてくれたかね?」
「それは...」
また、少女が口をつぐむ。
男は相変わらず表情を変えぬまま少女に語りかけるように言う。

「人間とは弱い生き物だ。だからこそ愛情をもとめるのだろう。それと同じように、神という絶対の存在ももとめる。君もそうだ。先ほどここで手を組み、神に祈りを捧げていた。何かを願っていた。だがそれは自らの手で掴まなければならないものだ。何だってそうさ。誰かに与えられたものを、我が物顔で使えるかい?そんなものからは達成感さえも生まれないだろう。何もかも、自らの力で手に入れなければならない」

先ほどよりも少し笑顔に、それでも目は真っすぐと少女を見据えていた。
少女は不思議と怒りを覚えなかった。
「貴方は...」
少女がやっとのことで口を開く。
「何だね?」
「貴方は...いったい何なのですか?」
表情は変わらない。変わらないが、哀しい顔にも、怒りの顔にも見える。
男はそっと口を開いた。
そこで教会の中に強い風が通り過ぎた。

「私は だよ」

少女はその瞬間目を男から逸らしてしまった。
風が完全に通り過ぎた後、少女は目をゆっくりと開いた。
「え....?」
目を見開いた。
そこには先ほどまで椅子にどっかりと構えていた男がいないのだ。
後ろを振り返っても、どこにもいなかった。
一度目をこすってみても同じだった。
教会の扉からは距離がある場所なのでちょっとの時間で出ることなど不可能だ。ならばあの男はどうしたというのか。
少女の中には疑問が残っていた。



愛されたいのならまず自分から愛したまえ



風に残ったその言葉は、少女には届かずに消えていった。











終わり







後書き
なんとなく書いてみたかった代物。

未だ見ぬ秋の大三角形のひとつに
貴方の名前を

貴方のその
傷のない手も
桜色の唇も
風に流れる髪の毛も

みんなみんな懐かしい思い出となって消えていく